「なんか、すみません。」

「いや…別に……」

ひかりは、大きな口でケーキを口に運んだ。



来なくて良いと言っているのに、ひかりは毎日見舞いに来る。
俺の好きなケーキ屋のケーキと花を持って…



「仕事はどうなってるんだ?」

「はい、少し遅れて行くって兄さんには言ってありますから…
あ、仕事が終わったら、兄さん達もまた来るって言ってました。」

「いいよ、別に…そんなたいしたことじゃないんだから…」

「でも、マイケルさん達も心配してましたし…」

昨日はKEN-Gも来たし、お客からの花束も届いて、今、俺の病室は花やスイーツで埋もれている。
早く退院しないと、逆にえらいことになってしまいそうだ。



「とにかく、俺は大丈夫だから…
それ食べたら、早く仕事に行けよ。」

「……はい。」



そして、次の日もひかりは見舞いにやって来た。



「また来たのか。」

「はい。」

おどおどとしながら、ひかりはケーキと花を差し出した。



「……ありがとう。」

もういらないって言ってたのに…
とはいえ、そうも言えず、俺はありがとうと言うしかなかった。



「良かったら、どれか食べないか?」

「あ、ありがとうございます。じゃあ…これを…」

ひかりは選んだケーキを皿に取る。



「あの…昨日も言ったけど…毎日見舞いに来なくて良いから。
今回のことは俺が勝手にやったことだから、おまえが気に病む必要もないからな。」

「で、でも……」

ひかりの瞳にみるみるうちに涙が溜まって行く。



「だから…ほら、俺だってこんなに元気だし…な。」

「だけど……」

「……もう一度言うぞ。
今回のことは、誰のせいでもない。
俺が勝手にやったことだ。
だから、本当に気にするな。
それは純平にも言ってある。
二人とも、何も悪くないんだ。」

ひかりは大きく首を振った。



「私が悪いんです。
私…何もわかってなかった。
ホストと付き合うことがどんなことなのか、少しもわかってなかったんです。」

ひかりはそう言うと、俯いて唇を噛みしめた。