「あぁ、気持ち良いなぁ…」

川縁に立ち尽くし、カズが両手を大きく伸ばした。



「やっぱり天気が良いと、気持ち良いな。」

「そうだな。」

俺達は並んで河原に腰かけた。
ぼんやりと遠くを見るカズの瞳は何を見ているのだろう。



「カズさん、今頃どのあたりかなぁ…」

俺がそう言うと、カズは小さく笑った。



「お前、本当に懐いてるんだな。」

「なんだよ、懐いてるって犬みたいに…」

「だって、俺達が会う時にも勝手に来るし。」

「あんただって、ひかりちゃんを連れて来てたじゃないか。」

「それは妹だから紹介しといた方が良いかと思って…」

やはり、二人っきりでは気詰まりだったんだろうか?
俺が見に行ったのも、実はそういうことを考えてのことだった。
余計なおせっかいかなとは思いつつも、カズのことだ。
話しにくくて困ってるんじゃないかって思ったんだ。



「そういえば、あの人…これからも『カズさん』で通すつもりなのかな?」

「そりゃ、そうだろう。
俺達にとってはずっと『カズさん』だったからな。」

「なんだかややこしいな。」

カズはきっと照れくさいんだろう。
確かにややこしいが、今まで長い事『カズさん』と呼んでてだけに、急に変わっても呼びにくい。



「話は変わるんだけど…」

「なんだ?」

「みゆ…ひかりのこと、どう思う?」

「え?どうって……?」

カズは突然何を言い出すんだろう。
ひかりのことを言い出されると、どうも気持ちが動揺していけない。



「あれでも、あいつは良い年をした女だ。
他人から見て、女としての魅力はあるのかどうなのかと思ってな。」

「そういうことか…
可愛いと思うよ。
ただ、ひかりちゃんはあんたの妹だから、俺から見ても女というより身内みたいな感じがしてしまう。」

「やっぱり魅力はないか…
良い年をして彼氏もいないから、気になってるんだ。」

「魅力がないって言ってるわけじゃない。
それに……純平とはけっこう仲良くやってるみたいだぞ。」

なんだろう…
そう言ったら、心の中になんともいえない不快なものが渦巻いた。