「それで、美幸はシュウのことは?
何か思い出したようなことはなかったんですか?」

「いえ、それはありませんでしたが、シュウさんの名前を知って、ご自分が書かれている携帯小説の主人公と同じだということで、酷く驚かれていました。」

「あぁ…そりゃあ驚きますよね。
でも、それだけなんですか?」

「え、ええ…
でも、ある時、ひかりさんがピンクのモルガナイトの指輪をさしてこられた時…シュウさんがえらくその指輪に興味をもたれて…」

「ピンクのモルガナイトの指輪?
あ……もしかして、シュウが美幸に贈った…ケーキ屋の女の子に選んでもらったあの指輪のことですか?」

そうだ…思い出した。
ハート型の指輪だ。
ケーキ屋の女の子、ここあちゃんとかいったか…あの子が赤いルビーのもの、そして、美幸がピンクのモルガナイトだ。



「そ、そうなんです!
美幸さんはなぜだかあの指輪を持ってらして…」

「おかしいじゃないですか?
あの指輪は、小説の世界で得たもの…
そんなものまでが、こっちに具現化されたっていうんですか?」

「そうなんです。」

「どうしてそんなことが?」

「KEN-Gさんもわからないとおっしゃってました。
でも、きっと二人の愛が起こした奇蹟じゃないかって…」

奇蹟か…
曖昧で便利な言葉だ。
だが、あの指輪は、確かにシュウの想いが詰まったものだ。
そういうこともあるのだろうか?



「美幸はその指輪のことを何と言ってたんですか?」

「全く覚えがないけど、ポケットに入ってたとかおっしゃってました。
きっとお母さんが買って下さったものだろうと思われてるみたいでしたよ。」

「いや、それはきっとシュウが美幸に贈ったものでしょう。」

「ええ、そうだと思います。」