「あ、カズ…おはよう。
今、昨夜のホストクラブのことを話してたんだ。」

「あぁ、そうか…」

「それで、とっても楽しかったから、美幸ちゃんにも今度行ってみたらって言ってたんだよ。」

美幸は、何とも言えない顔をして、黙っていた。
その理由はわかっている。
店にはすでに行ったことがあるからだ。
その後ろめたさから、あんな顔をしてるんだろう。



「美幸には、ああいう店は確かに刺激が強すぎるかもしれないな。」

「そ、そうだね…私には向いてないかも…」

俯いて小さな声で美幸はそう言った。



「でも、何事も勉強だ。
たまにはああいう所で発散するのも良いんじゃないか?」

「えっ!?」

美幸が驚いたような顔で俺を見た。
きっと、反対されると思ってたんだろう。
いや、シュウのことがなければ、俺だって、もちろん、反対しただろうが…



「おまえの給料じゃきついだろうから、俺か大河内さんと一緒に行けば良い。」

「えっ?おじいさんと会っても良いの?」

「それはこないだも行っただろう?
あんまり迷惑ばかりかけるのは良くないが、俺は何も大河内さんと絶対に会うなと言ってるわけじゃない。
嘘を吐いたりせずに、ちゃんと言って行けば良いんだ。」

「そ、そうなんだ…じゃ…そのうち連れて行ってもらおうかな?
あ、野々村さんも一緒に行って良い?」

「もちろんだ。」

俺がそう言うと、美幸は途端ににっこりと微笑んだ。
本当に単純なやつだ。



この世界ではシュウはカリスマホスト、美幸はただのオタクな女。
今回はシュウが美幸を愛するという設定もない。
そんな中で、また以前と同じように愛し合うようになるのは本当に難しいことだ。
だけど、またそうなれたら…
それほど嬉しいことはない。
美幸のことをあんなに考えてくれたシュウのことだ。
今度は、設定がどうのこうのとか、つまらないことには悩まされずに純粋に恋を成就してほしい。
そのためなら、俺も出来る限りの協力をするつもりだ。