赤い流れ星3

(……野々村さんって、おつきあいした相手がいるんだ…
それも、何人も……)



なんだかとても意外な気がした。
失礼だな、私……自分の事を棚に上げて、野々村さんのことをそんな風に考えてたなんて…
それに…ちょっと寂しい気もした。
野々村さんもきっと私と同じ恋愛経験ゼロ仲間だと思ってたから。



そっか…野々村さんも理想は面食いだけど、実際にはそんな相手と付き合うのは無理だって理解して…
それで、普通の人と付き合ったんだ。
普通にもいろいろあるけど、もしかしたら普通の中でも格好良くない方寄りの人だったのかも…



『本当は面食いなのに、イケメンじゃない人と付き合ったのはなぜですか?』



失礼な質問だってわかっていながら、つい気になって私は野々村さんにメールを送った。
今度はすぐには返って来なかった。
もしかしたら、気を悪くしたのかもしれない。
謝った方が良いんだろうか?
不安がどんどん広がって……
そのうち、ようやくメールの着信音が響いた。
もちろんそれは野々村さんからのメールで、私は恐る恐るそのメールを開いた。



『恥ずかしいんですけど、私、若い頃は誰にも逆らえない人間だったんです。
だから、お付き合いをした人は、皆、好きでもなんでもない人ばかりです。
こんなことを書いたらひかれるかもしれませんが、正直に書きますね。
その人達は私が好きなんじゃなくて、ただ、私のお金や身体がほしかっただけなんです。
私自身、その事がわかっていながら、それでも断ることが出来ませんでした。
本当に馬鹿ですね。(ToT)』



どうしよう…野々村さんにそんな過去があったなんて…
私の興味本意な質問が、野々村さんに悲しい記憶を思い出させてしまった。
普段、絵文字も顔文字も滅多につけない野々村さんがつけた泣き顔の顔文字が、なんだかとても痛々しくて……



『ごめんなさい!
変なことを聞いてしまって。
本当にごめんなさい!m(__)m』

長々と書くと却って傷に触ってしまうような気がして、私はあえてごく簡単にそう送った。



『美幸さん、お気になさらないで下さい。
昔の馬鹿な私には今でも腹が立ちますが…
でもね、美幸さん…私、こんな年になって初めて本当に好きだと思える人に巡り合えたんですよ。
もちろん、完全な片想いですが、それでも私とても幸せなんです。
私の想いが伝わる事がないってわかってはいますが、それでも本当に好きだって思える人が出来たのはとても幸せな事ですよ。』



野々村さん、それほどまでにおじいさんのことを…!
なんとかしなきゃ!
なんとか、おじいさんと野々村さんを結び付けてあげたいと、私は心の底からそう思った。