「美幸…今夜、俺達は出かけて来るから、良かったら、野々村さんと食事でもして来い。」

その日の夕方、兄さんはそんなことを言い出し、私におこずかいをくれた。



「あ、わ、わかった。」

それは確かにありがたい。
おこずかいは二人でお腹いっぱい食べても、まだ少し余る程度だし、へそくりが出来る。



私は早速、野々村さんにメールを打って、仕事帰りにいつものファミレスで待ち合わせることにした。







「ひかりさん!お待たせしました!」

「野々村さん!こんばんは!」



ファミレスに入って、注文して…いつものように他愛ない会話を交わす。



「兄さん達、今日は皆でおでかけなんだ。」

「そうなんですか。」

「だから、野々村さんと食事でもして来いって、お小遣いをくれたんだよ。
なんか、あの四人、妙に仲良しなんだよねぇ…
あ、そうそう、兄さんったら、昨夜突然いなくなってね。
スマホも持って行ってなかったから、皆で寝ずに心配してたんだよ。
そしたら、朝方ふらっと帰って来て、ネイサンさんと夜景を見て来たなんて言うんだから…
本当にいい年して、何なんだろうね?あの自由きままさは…」

「そ、そうだったんですか。
で、でも、何事もなくて良かったじゃないですか。」

「それはそうだけど…
私にはどこに行くんだ?とか誰と行くんだ?とかうるさいくせに、自分はどうなんだって話だよね。」

思わず愚痴が飛び出した。
でも、昨夜は本当に心配したんだから…



「青木さんは、ひかりさんのことが心配だから、ついつい口うるさくなられるんですよ。」

「それはわかってるけど…」

ちょうどそこにオムライスが運ばれてきたから、私は、話を中断してオムライスにかぶりついた。