赤い流れ星３

「それで、野々村さんはどうして大河内さんが賢者さんだとわかったんですか？」

「青木さん…覚えてらっしゃいますか？あの日のことを…
あの日、門が動き出したところで、青木さんはマイケルさんに呼び出されて出て行かれた…」

「はい、俺もどうなるのか見届けたかったんですがあの時は、マイケルがどうしても来てくれってことだったんで…」



（あ……）



その時、俺は思い出した。
あの時だ！
あのタクシーの中で、シュウや美幸の記憶がなくなること、そしてそれによってもしかしたら俺達にも影響があるんじゃないかって思って、それで不安になって焦って書いたんだ。



『野々村さんの言うことを信じろ。
彼女の話はすべて真実だ。』と。

野々村さんだけが、俺との秘密を共有する人だから…



思い出した途端に、全身が総毛立つような感覚を覚えた。
そう、俺ははっきりと思い出したんだ。
忘れていた数年間を…
あの時の不安と興奮を…



「その後、賢者さんがシュウさんを門の中へ突き飛ばしました。
そこまで書いたところで画面が消えました。」

「画面が？」

「ええ、突然…」

「それじゃあ、美幸のあの物語はすべて…」

「いえ、その直前にバックアップを取ってますから、消えたのはそこからだけです。
そして、次の日の朝、私は青木さんにそのことをお伝えしようと思いました。
すると、青木さんは何事もなかったかのように、今夜の美幸の歓迎会に来てくれるんですね？ってそんなことをおっしゃったんです。」

「なるほど、そこが野々村さんとカズの異なった数年間の着地点だってわけだね。」

ネイサンは、微笑みながらそう言った。



「さすがにあんたは飲みこみが早いのう。
その通りじゃ。
野々村さんが通った道がAという道だとしたら、和彦さんはBの道を通った。
そして、その朝の電話の時には二人はまた同じ道で出くわした…」

「僕もきっと野々村さんと同じルートを通ったんだろうね。
シュウや美幸ちゃんのことは聞いてたけど、二人とは直接接触したことはないから、影響は受けなかった…」

「おそらくその通りじゃな。」