しばらくすると、大河内さんがやって来た。
どこからどう見ても、ごく普通の人間だ。
この人が、小説の世界から抜け出て来たなんて、とても信じられない。
「和彦さん…あの時の記憶を取り戻したというのは本当か?」
「は、はい。
俺にもどう考えたら良いのかわからないのですが、俺にはなぜだか数年分の異なった記憶があるんです。
しかも、片方は突拍子もないもので…」
「そうですか…
野々村さん…わしのことはもう打ち明けたんじゃな?」
「はい。」
「和彦さん、すぐには信じられないと思いますが、わしはシュウのいた小説の世界から来た者です。
ひかりが考え出した賢者というキャラクターです。」
「賢者さんのことは、野々村さんの小説でよく知ってます。
ですが…それがあなただというのはいまだに理解出来ません。
信じないということではないんですが…その、なんというか…」
大河内さんは大きく頷いた。
「その気持ちは当然のことじゃ。
おそらく、ひかりが初めてシュウに会った時もそんな気持ちだったんだろうと思う。
今すぐ信じようとしなくてもかまいません。
ただ、わしは本当にあの賢者だし、シュウとひかりのことを見届けたくて…いや、現実の世界に行けるかもしれないという誘惑に負けてこっちに来たんです。」
そう言いきった大河内さんの瞳に、嘘は感じられなかった。
確かに、今すぐ大河内さんの言葉を信じることは出来ないが、だが、俺の言った話を馬鹿にしてるとか、信じていないとか、そういうことはないと思えた。
「とにかく、今はわしのことより、ひかりとシュウのことじゃ。
和彦さん、あんたももちろん協力してくれるんじゃろ?」
「協力って?」
「だから…シュウとひかりをまた元のようにくっつけてやりたいんじゃ。
和彦さんも知ってるじゃろう?
シュウは、ひかりをどうしても元の世界に戻してやりたかった。
それに、雅樹との過ちのことも忘れさせてやりたかった。
だから、お互いの記憶を失うことを選んだ…命より大切なひかりと別れるだけじゃなく、ひかりとの大切な記憶をすべてなくすことを選択したんじゃ。」
雅樹…
そうだ…美幸は、シュウがここあちゃんと浮気してると思いこんで、雅樹と浮気をしてしまった。
それが間違いだったと気付いて、美幸は深く苦しみ、シュウから離れようとした…
どこからどう見ても、ごく普通の人間だ。
この人が、小説の世界から抜け出て来たなんて、とても信じられない。
「和彦さん…あの時の記憶を取り戻したというのは本当か?」
「は、はい。
俺にもどう考えたら良いのかわからないのですが、俺にはなぜだか数年分の異なった記憶があるんです。
しかも、片方は突拍子もないもので…」
「そうですか…
野々村さん…わしのことはもう打ち明けたんじゃな?」
「はい。」
「和彦さん、すぐには信じられないと思いますが、わしはシュウのいた小説の世界から来た者です。
ひかりが考え出した賢者というキャラクターです。」
「賢者さんのことは、野々村さんの小説でよく知ってます。
ですが…それがあなただというのはいまだに理解出来ません。
信じないということではないんですが…その、なんというか…」
大河内さんは大きく頷いた。
「その気持ちは当然のことじゃ。
おそらく、ひかりが初めてシュウに会った時もそんな気持ちだったんだろうと思う。
今すぐ信じようとしなくてもかまいません。
ただ、わしは本当にあの賢者だし、シュウとひかりのことを見届けたくて…いや、現実の世界に行けるかもしれないという誘惑に負けてこっちに来たんです。」
そう言いきった大河内さんの瞳に、嘘は感じられなかった。
確かに、今すぐ大河内さんの言葉を信じることは出来ないが、だが、俺の言った話を馬鹿にしてるとか、信じていないとか、そういうことはないと思えた。
「とにかく、今はわしのことより、ひかりとシュウのことじゃ。
和彦さん、あんたももちろん協力してくれるんじゃろ?」
「協力って?」
「だから…シュウとひかりをまた元のようにくっつけてやりたいんじゃ。
和彦さんも知ってるじゃろう?
シュウは、ひかりをどうしても元の世界に戻してやりたかった。
それに、雅樹との過ちのことも忘れさせてやりたかった。
だから、お互いの記憶を失うことを選んだ…命より大切なひかりと別れるだけじゃなく、ひかりとの大切な記憶をすべてなくすことを選択したんじゃ。」
雅樹…
そうだ…美幸は、シュウがここあちゃんと浮気してると思いこんで、雅樹と浮気をしてしまった。
それが間違いだったと気付いて、美幸は深く苦しみ、シュウから離れようとした…



