「ネイサン、居間に布団を敷くから…」

「あ、僕はカズの部屋で寝かせてもらうよ。」

「えっ?俺の部屋で?」

「あぁ、僕にはタカミ―みたいな趣味はないから安心してよ。
カズとはいろいろと話したいこともあるからね。」

そう言って、ネイサンは俺に目配せを送った。
話したいことって何だろう?
俺はネイサンとはそれほど親しいわけじゃない。
いや、親しくないというのとは少し違うが、アッシュ達の方が、親しいはずなのだけど…
ただ、俺とは年齢が近いから、もしかしたら、なにか相談事でもあるのかもしれない。







「カズ…本当に良かったね!」

部屋で二人っきりになった途端、ネイサンがそんなことを言い出した。



「良かったって、何が?」

「何がって、妹さんのことに決まってるじゃない。」

「美幸のこと?美幸の何が良かったんだ?」

「カズ…ふざけてるの?」

「え?俺はふざけてなんかないけど…」

ネイサンは怪訝な顔で俺をみつめていた。



「まさか、あの時のことは冗談だった…なんていうんじゃないだろうね?」

ネイサンの顔が急に険しいものに変わった。



「ネイサン、一体、何の事を言ってるんだ?
君の行ってることが、さっぱりわからない。」

「だから…あの時のことだよ。
妹さんが違う世界に行ってしまったっていう…」

「違う……世界?」

ネイサンの言葉を聞いた途端、なんだかたとえようもなく不安な気持ちになった。
心の中がざわめいて、酷く落ち着かない。



「カズ…どうかしたの?
まさか、忘れたっていうんじゃないだろ?
君はあの時、僕にシュウを預かってくれって頼んだ。」

「……シュウ……」

知らないはずのその名前が、頭の中でぐるぐると回り始めた。
なにかを思い出しそうで…でも、それがつかめない。
今日はずいぶん飲んでたというのに、酔いもすっかり覚めてしまってた。



「そう、シュウだ…シュウは、美幸ちゃんが書いた携帯小説のオリキャラだ。
そのキャラクターが、現実に現れたんだ。
カリスタギュウス流星群の奇蹟で、小説のキャラクターが具現化したんだ。」

「な…
カリスタギュウス……」

俺は全身から汗が噴き出すのを感じた。
ネイサンの言う言葉に、心臓が…頭が、激しく反応する。
速まる鼓動…痛む頭…
何かが、点から形作られそうで…



「カズ…大丈夫か!?」

「だ、大丈夫だ…」

「いいか?美幸ちゃんは、小説の続きを書いた。
二人が、時空を超える門を通って、小説の世界に行くって物語だ。そして、ふたりは……」

「あ、ああああーーーーーっ!」