「全く、美幸の奴……」

青木さんは、小さな声で呟かれた。



「あ、あの…すみません。
でも、特におかしなことはありませんでしたので…」

私がそう言うと、青木さんは私をちらっと見られて、またすぐにその眼を逸らされた。



「大河内さんは、なんだってホストなんかと…」

「な、なんでも、KEN-Gさんの持ってらっしゃるビルに、ホストクラブがあるそうで…」

「……そうなんですか。
それで、美幸はどんな感じでしたか?」

「え?」

「ホストが来てから…ですよ。」

「あ、あぁ…き、緊張されてるみたいでしたよ。」

「……そうですか。」

ひかりさんの嘘に加担してしまった…
あまり良い気分ではないけれど、かといって協力しないとひかりさんの立場がまずくなるから仕方がない。



「まさか、これを縁にホストクラブに来いとか言われたんじゃないでしょうね?」

「え?いえ、そ、そんなことは…」

誘われたけど断ったといえば良かったかしらと言ってしまった後で気になった。



「野々村さん…」

「は、はいっ!」

「もし、大河内さんがホストクラブへ行こうと言い出しても、美幸は連れて行かないで下さいね。
あいつは年はそれなりにとってますが、まだまだ子供なんです。
物事の分別もつかない。
だから、一度そういう所へ行ってしまうと、おかしなことにもなりかねない。
どうか、よろしくお願いします。
あなたが行くのは勝手だが、美幸は絶対に連れて行かないで下さい。」

「わ、わかりました。
美幸さんもきっとそういうところへは行きたがられないと思います。
それと…」

「……何か?」

「美幸さんは、確かに子供っぽいところもありますが、物事の分別がつかないなんてことはないと思います。
意外としっかりなさってますよ。」

なぜ、そんなことを口走ってしまったのか、よくわからないのだけど…
青木さんは何もおっしゃらずにじっと私をみつめてらっしゃった。