兄さんはなにかを考えるように、じっと一点をみつめてた。
一体、何を考えてるんだろう?
緊張で心臓が飛び出しそうだ。



「……俺は、大河内さんと絶対に会うなと言ってるんじゃない。
あんまり親しくして迷惑をかけるんじゃないって言ってるんだ。」

「わかってるよ。
だから、そんなにしょっちゅう会ってるってわけじゃないよ。
今日は久しぶりだったんだもん。」

「カズ…もうそのくらいで良いじゃない。
皆、お腹も減ってるんだし、そろそろ夕食にしようよ。」

「美幸…もう一度聞くが、そのホストとは本当に初めて会ったんだな?」

「本当だよ!
私とホストなんてどこに接点があるっていうの?
おじいさんが連れて来なきゃ、出会うことだってないじゃない。」

兄さんの視線が苦しくて、思わず目をそらしたくなったけど、今逸らしたら嘘がバレてしまう…
そう思って必死で耐えた。



「……わかった。
これからはつまらない嘘は吐くな。
ちゃんと正直に言って行くんだ。」

「わかったよ。」

やった!
兄さんは、私の嘘を信じてくれた!
これで最悪の時は免れた。
そう思うとほっとして、全身の力が抜けるような想いだった。



「じゃあ、夕食の準備にとりかかるね。」

「あ、マイケルさん、私も手伝うよ!」

兄さんからこれ以上何か言われたくなくて、私はマイケルさんに着いて行った。