「そんなこと、ボクにわかるわけないじゃない。」

「カズ…美幸ちゃんだってもう大人なんだから、もう少し自由にさせてあげたって良いんじゃないかな?
あのホストがいたのはなんでかわからないけど、それにしたって何もふたりっきりってわけじゃないんだよ。
KEN-Gも野々村さんもいたんだし、心配なんてないじゃない。」

「心配ないだって?
マイケル…ずいぶんと無責任なことを言うんだな。
美幸は年は大人かもしれないが、世間知らずだし精神的にもまだまだ子供だ。
大河内さんはなにげない気持ちでホストとつきあってるのかもしれないが…
もしも、美幸がホストクラブなんてところに連れて行かれて、そこでホストにハマるようなことにでもなったらどうする?」



つい感情的になってしまった。
別に彼らが悪いわけじゃない。
そんなことはわかってる。
そう、俺は美幸に腹が立っていただけなんだ。

確かに、俺は大河内さんとはあまり親しくしないように言った。
でも、全く会うなと言ってるわけじゃない。
遊びに行くなら、最初から嘘など吐かず、正直に話して行けば良いじゃないか。
なぜ、そんな子供じみた嘘を吐く?
それはきっと後ろめたいことがあるからだ。
後ろめたいこと…それこそがあのホストじゃないのか?
美幸は助手席に座っていたということだし、もしかしたら、すでにそのホストにハマっていて…
それを知った大河内さんが、美幸のために金を遣ってそいつと遊びに行けるように取り計らったのではないだろうか?



頭に浮かぶ想像に腹立たしさが募った。



(美幸の馬鹿野郎…!)



「……カズ……とにかく、今は掃除をやってしまおうよ。
話し合いはそれがすんでからだ。」

「……あぁ。」

掃除なんかどうでも良い!と言える程、俺は子供じゃない。
そうだ、今はとにかくやりかけたことを終わらせてしまおう。
俺は雑巾を手に、掃除に取り掛かった。



(心の中のもやもやも掃除出来たら良いのに…)