「ねぇ、野々村さん、どう思う?
私、本当にわけがわからないんだ。」

「そうですねぇ……」



美幸さんからの電話はあさっての連絡だった。
なんでも、シュウさんから電話があって、あさってのことが決まったらしいのだけど、美幸さんは意外にもシュウさんから電話があったことを喜んではいらっしゃらず、どちらかというと困ってらっしゃるみたいだった。
それというのも、シュウさんのことがよくわからないからだそうで……



「でも、嫌いな相手にプライベートな連絡先を教えるのって誰でもいやだと思うんですよ。
しかも、登録しておくように言われたってことは、シュウさんは美幸さんことを嫌ってらっしゃらないと思いますよ。」

「う~ん……確かに嫌いっていうのとはちょっと違うかもしれない。
でも、苛々する相手だと思ってることは間違いないと思うんだ。」

「どうしてそう思われるんです?」

「だって…そんな顔するし、そんな口調になるし……」

「そんな顔……ですか?」

「うん…おじいさんだったか誰か忘れたけど、シュウさんとうちの兄さんが似てるって誰か言ったよね。
言われてみれば、確かにそうなんだ。
で、兄さんが私に向かって見せる苛々した時の顔……シュウさんもその顔によく似た表情するんだよ。
なんていうかなぁ…
『なんで、そんなことがわからないんだ。』みたいな顔だね。」

「はぁ……」

美幸さんのお話を聞いていると、なんとなくそれがどんな顔なのかがわかった。
青木さんが美幸さんにそういう顔をされるのを見た事がある。
そういう時の美幸さんは可哀相なくらい萎縮されて……



「シュウさんはどういう時にそんな顔をされるんですか?
最近ではどんな時にありました?」

「最近?最近だったら……あ……ほら、おじいさんの家に行った時……
野々村さん達がお酒を探しに行っちゃって、私とシュウさんが二人っきりになった時……
でも、あの時ね…シュウさん、少しだけ自分のこと話してくれて、なんだったかで二人共おかしくなって、シュウさんも笑って……実は、珍しく良い雰囲気だったんだ。
あ、そうだ。
シュウさんは私を見てたら苛々するんじゃないかって話をしてたんだ。
でも、優しく笑ってくれたから、あれ?私の勘違いだったのかな?って思ったら、急に態度が変わって、私のことをほったらかしで、おじいさん達の方へ行っちゃって……
もう本当に何がなんだかって感じでね…そういうところも、兄さんに似てるんだよねぇ…」

「そ、そうなんですか。」