「ほんまにええ景色ですなぁ……」



慎二が大きな窓から見える景色に、うっとりと目を細める。



「だろ?この夜景が気に入ったから、ここに決めたようなもんなんだ。
俺、昔から夜景が大好きでな。」

「え?ほな、もしかして、ルーチェをあのビルに決めはったんも、そのせいですか?」

「確かにそれもあるだろうな。」



じいさんの家を出た俺達は、町で少しぶらぶらしてから慎二のおすすめの店に向かい夕食を済ませた。
その店が、奇遇にも俺の家から近かったこともあり、誘ってみると、好奇心の強い慎二は二つ返事で俺の家に着いて来た。



「それにしても、マンションの外観も部屋の中のインテリアも、この綺麗な夜景も、なんやもう全部がシュウさんにぴったりというか……
ほんま、格好良過ぎやわぁ……」

そう言いながら、慎二は部屋の中をゆっくりと見渡した。



「よく言うよ。」

「いや、ほんまですて。
俺の家なんか、ふっるいふっるいぼろぼろの町屋やし、平屋やから窓から夜景なんて見えません。
俺も家の中では安もんのジャージ着てだらだらしてるし、なんやもう違い過ぎて情けのうなってきますわ。」

「家でリラックスするのはなにも悪いことじゃないぞ。
おまえは店では手を抜くことがないし、おまえの庶民的なところが良いって言う客も多いしな。」



それはお世辞でもなんでもなかった。
慎二は普段からとても自然体だ。
こっちの出身なのに、店ではあえて標準語を遣う者も何人かいるが、慎二はそういうことはしない。
町の情報や、テレビの話等もよく知っていて、人を飽きさせないず気取らない所が親しみやすくて誰にでも好感を持たれる。
じいさんに気に入られてたのもきっとそのためだろう。