「野々村さん……もしかしたら心配してるの?
純平君はホストだし、好きだなんて誰にでも言ってることだって……」

「い、いえ、そんなことは……」

私は慌てて首を振った。
口にした言葉は本心でもあり、そうでないとも言える。
会った印象から感じる純平さんは、ホストさんだとはいってもすれたところがあまりなく、誠実な人のような気がする。
だけど、そうはいっても、純平さんもそれなりの年月をホストとして過ごされているようだし、あれが職業上の顔じゃないとは言い切れない。
つまり、純平さんの本心なんて全然わからないってこと。



「……私だって、そのくらいのことは考えてるよ。
いくら恋愛経験がないったって、完全に浮かれる程は若くないもん。
でも……それでも良いんだ。
好きだって言われたこと……本当に嬉しかったし、この先のことなんてまだ何もわからないけど、これだけで終わったとしても構わないんだ。」

「美幸さん……」



美幸さんの言葉にはしっかりとした信念のようなものが感じられた。
そんな人に、私が言えることなんて何もない。
シュウさんとのことは気にはなるけど、私はなんだか美幸さんを応援したい気持ちになっていた。



「美幸さん……今日、美幸さんの方から告白されたってことでしたが、一体、なにがあったんですか?
どうしてそんなことに…?
良かったら、聞かせてもらえませんか?」

「え…あ…うん、実はね……」



美幸さんは今日の出来事を話して下さった。
慎二さんが恋のキューピッドになったことは、意外だったし、とても皮肉な話だと思った。
もしも、KEN-Gさんが純平さんをはずしてほしいと頼まれなかったら……
そして、シュウさんが慎二さんを選ばれなかったら、こんなに早く純平さんと美幸さんが接近することはなかったかもしれないのに……



(こういうのが運命ってことなのかしら……?)



そういえば、もしも青木さんが真面目にブログを書かれていたら、私が青木さんにお会いすることはなかったかもしれない……
ゴーストライターを雇われる時に、私を紹介してくれた方がいらっしゃらなければ、それでもやはり出会うことはなかっただろう…



(そしたら、青木さんをこんなに好きになることも、シュウさんやKEN-Gさんみたいな不思議な世界の方々と出会うこともなく……
あ、だったら、美幸さんもこちらに戻って来られることはなかったのかもしれない……)



そんなことを考えると、目の前の美幸さんが…いえ、ここにいる自分自身までもがどこか夢の中にいるようなおかしな感覚を私は感じた。