「で……ひかりちゃんはどうだった?」

「……えっ!?どうってなにが?」

「あの……だから、慎二の印象……」

「慎二さん?うん、すごく良い人だと思うよ。
楽しいし、明るいし、優しいし……」

「……そう。そうだよね……」



純平君はそう言ったっきり、黙りこんでしまって……



「純平君……どうかしたの?」

「……別に。
ごめんね…急に電話なんかして。
じゃあ……」

「う、うん、じゃあね。」



純平君……どうしたんだろう?
よくわからないけど、なんだかおかしな雰囲気で電話は終わった。



純平君と良い感じだと思ったのは、やっぱり私の自惚れだったみたい。
そうだよね……
そんなにうまくいくわけないよね。
だって、私は可愛くもなんともないし、スタイルだって良くないし……



ほんの数分前までの浮かれた気分が嘘みたいだった。



(変なの……)



なんとももやもやしたいやな気分……

……ま、いいや。
考えてわかるわけでもないんだし。



(わっ!大変!)



スマホの画面をふと見ると、もうお昼休みの時間もあんまり残ってなくて……
私は、あわててお弁当を開き、口の中に放り込んだ。
野々村さんにも返信しようと思ってたけど、ちょっと時間がなさそうだ。
……っていうか、野々村さんにもなんか返信し辛いな。
やっぱり、まだ嘘吐かれたことを根に持ってるのかもしれない。
昨夜のことだもん…そんなに早く水に流せるわけもないよね。

昨夜といえば、兄さんは今日はちゃんと出社したんだろうか?
今日は、まだ顔を合わせてないけど……



なんだかもう……皆好き勝手してるよね。
……そうだよ。
兄さんは女の人と遊んでばっかりだし、野々村さんやお爺さんは嘘吐くし、純平君もなんだか思わせぶりなことばっかり言うし…それに、シュウさんもわけわからないし……



やっぱり、ここは本来私がいるべき場所じゃないのかもね…
おばあちゃん家で、一人暮らししてた時が懐かしいよ、全く。
いろいろ不便なこともあったけど、こんなに気を遣うことなんてなかったもんなぁ……



でも、わかってる……
あの暮らしにはもう戻れない。
いや…私がもっとしっかりすれば、戻れるのかもしれないけど……
一人で暮らしていくだけの甲斐性は私にはまだない。



そんなことを考えてると、お弁当を口に運ぶ手も止まってしまった。