「本当にこんな所でええのか?」

「え、ええ……
ここだと遅くまで開いてますし、長居しやすいですから……」



お店を出る時、こっそりとKEN-Gさんにお話したいことがあると言って、いつものファミレスで落ち合うように頼んだ。
私は帰るふりをして一人で先にファミレスに向かい、KEN-Gさんは美幸さんとお家が近いから、美幸さんを送り届けてからまた戻って来られることになった。



「それで……
話というのはあの指輪のことじゃな?」

「そうなんです!
KEN-Gさん、あれをどう思われましたか?」

「あれは、シュウがひかりにプレゼントしたものに間違いない。
ひかりとシュウが出会ってから五周年のパーティをした時に、シュウがひかりにプレゼントをしてな……」

「それは、シュウさんがここあさんに頼んで選んでもらったもんなんですよね?
ここあさんもそれを気に入って…ひかりさんと仲良くなれるようにとの想いを込めて、ご自分は同じデザインのルビーの指輪を買われた……」

「野々村さん……さすがに詳しいのう……
その通りじゃ。」

KEN-Gさんは私の言葉に目を丸くしながら、大きく頷かれた。



「それで、あの指輪は…シュウさんがひかりさんにプレゼントされたものに間違いないんですね?
私は文章で読んだだけで、実物を見たわけじゃないですが、見た瞬間にそのことが思い出されて……」

「あぁ、まさにあの指輪じゃったよ。」

「やっぱり……!」



実物をご覧になったことのあるKEN-Gさんがそう仰るんだから、間違いない。
私の身体の中を、ぞくぞくするような感動が駆け巡った。



「でも……どうしてあの指輪が……
ひかりさんは、ある時、ポケットに入ってるのに気付いたものの、どういう経緯で手に入れたものかは記憶がないようでした。」

「……おそらく、二人の愛の強さがそんな奇蹟をもたらしたんじゃろうなぁ……
そうとしか考えられん。
二人の記憶は、門を開くエネルギーに変換されて消えてなくなった。
それでも、シュウとひかりは本能的になにかを感じている。
いや、二人が巡り会えたこと自体がその証なのかもしれん。
二人の間には、それほど深い絆があるんじゃ。
二人の心は記憶を失う時にも必死でそれに抗ったのかもしれん。
その強い力が、あの指輪をこの世界に引き寄せたのかもしれんな……
野々村さん!二人をまたあの頃のようにしてやろうな!
協力を頼むぞ!」

「は、はいっ!」

KEN-Gさんに突然手を握り締められ、私はびっくりしながら頷いた。