「……えっ!?どうして?」

到着した大河内さん達に、俺は慎二を紹介した。
にこやかに挨拶を交わす大河内さんや美咲さんとは裏腹に、ひかりは納得のいかない顔でそう言った。



「実は、つい最近、新人が入って、純平にはそいつの指導係みたいなことをやってもらってるんだ。」

「……そうなんですか、それで……」

「あれ?お客さん、純平さんがお気に入りやったん?
ごめんなぁ…
そんな寂しそうな顔、しんといて。」

「え…?
そ、そんなことないですよ。
ただ、いると思ってた純平君がいなかったから、ちょっと驚いただけです。」

「純平さんの代わりは出来ひんけど、俺も頑張りますよってにどうぞよろしゅう。」

「あ、こ、こちらこそ……」



慎二の屈託のない笑顔は、ひかりの気持ちを少し解きほぐしたようだ。
ひかりは、慎二の差し出した片手を、恥ずかしそうに握り返した。



こういう仕草が、ひかりをすれていない初心な女に見せるんだ。
これが演技だとしたら相当なもんだが、なぜホストの俺達相手にそういう演技をする必要があるのか……
いや、そんなものはあるはずがない。
だとしたら、大河内さんの手前なのか?
大河内さんの前ではそういう女でいる必要があるということなのか?



(……!?)



そんなことを考えながら、ふと隣の席のひかりに目を遣った時……
俺は、ひかりの小指にひかる指輪にひきつけられた。



「これ……」

「わ……なんですか!?」

「あ……すまない。」



俺は、無意識にひかりの手を取っていた。
その行為に、ひかりは過剰に反応した。
手を触っただけで、ひかりは頬を赤らめ、反射的に手をひっこめたんだ。



「……どうかしたのか?」

「いえ…ひかりさんの指輪が可愛いなと思って……」

「指輪……?」



それを見た大河内さんの目が大きく見開かれ、明らかに動揺した表情に変わった。
なぜだ、なぜ、大河内さんはこの指輪にそんな顔をする……!?



「な、なかなか良い指輪じゃないか。
どうしたんじゃ?
さ、最近、買ったのか?」

「ううん…
私もよく覚えてないんだけど、多分、母さんが昔買ってくれたものだと思うよ。
ポケットに入ってたんだ。」

「……そうか…そうじゃったか……」



大河内さんの瞳が潤んでいることを俺は見逃さなかった。
どういうことだ?
俺の心をざわめかせたひかりの指輪……
一体なにがあるというんだ!?