「あ、青木さん……さ、昨夜は、美幸さん、ビールに挑戦されたんです。
そ、それで、飲み慣れないから早くに酔いがまわられたんですわ。
量的には全然たいしたことないんです。
それに、家にお誘いしたのは私の方なんです。
昨夜は、私、あんまりお金を持って行ってなかったので、家で飲んだ方が安上がりだと思って……」

「……あれ?……野々村さん……
私、もしかして、昨夜のごはん代払ってないんじゃ……?」

「え……?」

しどろもどろの美幸さんをお助けしようと思って言ったことで、私はつい余計なことを話していた。



「……ったく、おまえって奴は……
……野々村さん、すみません。
これを……」

青木さんはポケットからお財布を出して、私の前に一万円札を差し出された。



「い、いえ、とんでもない。
そんなにかかってませんし、先日は美幸さんに出していただいたので、どうかそれはおさめて下さい。」

「そうおっしゃらずに……」

「いえいえ、いただけません!」

何度かのやりとりの後、青木さんはやっとお金をおさめて下さった。




「……本当に申し訳ありません。
今後こういうことがあったら、すぐに俺の方に請求して下さいね。
ただでさえ、しょっちゅう呼び出してはご迷惑をおかけしているのに……」

「いえ!そんなことはありません。
私、美幸さんとお会いするのが本当に楽しいんです。
私には時間だけは十分ありますし……
ずっと年上の私なんかと親しくして下さって……美幸さんには感謝こそすれ迷惑だなんて思ったことはありません。
美幸さん、これからもどうそよろしくお願いしますね。」

「う、うん。こっちこそよろしくね。」

はにかみながらそうおっしゃって下さった美幸さんを見て、青木さんは困ったような顔で小さく微笑まれた。