「ねぇ、野々村さん……どう思う?」

黙って携帯の画面をみつめる野々村さんの返事が待ちきれずに、私は声をかけた。



「……シュウさん…なんだか怒ってらっしゃるみたい……」

「やっぱりそうだよね?
でも、なんで?」

「それはきっとそのまんま、美幸さんが書かれた『ごめんなさい』に対してなんでしょうね。
美幸さんには何も悪い所はないのに、ごめんなさいって書かれたから……
逆にいうと、きっとシュウさんは罪悪感を感じられてるんだと思うんですよ。」

「罪悪感……?」

野々村さんはゆっくりと頷いた。



「シュウさん…本当は言い辛かったんだと思いますよ。
だから、ご自分では直接おっしゃらずに純平さんに言わせたり……
ほら、ここにメールは送ってくれて良いって書かれてるじゃないですか。
……そうだわ。もしかしたら、シュウさんはプライベートな名刺はKEN-Gさんみたいなお仕事絡みの方にしか渡さないとか、ご自分のルールのようなものを持ってらっしゃって、その手前、美幸さんにも教えられないって思われたんじゃないかしら?
でも、本心では連絡を取りたい。
だけど、ルールを曲げることは出来ないから、こんな書き方をされてるんじゃないですか?」

「ま、まさかぁ……
野々村さん、良い方に取り過ぎだよ。
シュウさんは私のことが嫌いだから……」

「いいえ、間違いありません!
だって、美幸さん……もしも、本当に美幸さんのことが嫌いだったら、こんなメール送る必要ないじゃないですか。
放っておけば良いだけのことでしょう?
それに、ね……美幸さんがKEN-Gさんと親しいこともシュウさんは知ってらっしゃるんですよ。
だったら、気を遣ってこんな内容は送って来ないと思うんです。
美幸さんに悪い印象を持たれて、それをKEN-Gさんに言い付けられて、そこからKEN-Gさんとシュウさんの仲がこじれたら困るでしょう?
でも、そうされなかったってことは、KEN-Gさんとのしがらみは全く関係なしに、美幸さん個人に送られたってことだと思いますよ。
つまり……シュウさんは美幸さんに……関心があるってこと。」

「え…ええっ…!?」

も、もうっ……野々村さんったら、真面目な顔で話すから、なんとなくそうなのかな?って気持ちになっちゃうじゃない。
でも、そんなわけない……うん、絶対にないってば。



「あ……あの、野々村さん……」

私が話しかけた時、玄関のチャイムが不意に鳴り響いた。