「え……純平君が……そんなことを……」



私は自分で思ってた以上に酔っ払ってたみたいだ。
そんなに大量には飲んでないはずだけど……情け無いやら、恥ずかしいやら。
だって、ファミレスで飲み始めた時以降のことは、ほとんど覚えてないんだもん。
ここに来る途中のタクシーの中で私はすでに眠ってたらしいけど、それよりもっと前から記憶がないって言ったら野々村さんはとても驚いた顔をした。
きっと、野々村さんも私がそこまで酔っ払ってたって気付かなかったんだね。

そして、私は思い掛けないことを聞かされた。
私が眠ってる間に純平君から電話があったこと……その電話を野々村さんが取って、先日のことを話してくれて……あれは私の誤解だったってことを……



「そのうち、美幸さんから順平さんに連絡してあげて下さいね。」

「……うん。」

本当はすぐにでも電話したかった。
純平君は、職業柄、きっと今も起きてるとは思うけど、でも、真夜中だからさすがに気がひけた。
野々村さんの手前もあるし……



「シュウさんもきっと……なにか誤解みたいなものがあるんですよ。」

「それはないよ!
シュウさんは……タカミーさんといるのがいやで…あの場から逃げる口実に私を送っただけで、名刺だって間違えただけだもん。」

「私は……きっとそれだけじゃないと思います。」

「え……?」

なんだか意外な言葉だったから、私は反射的に聞き返した。
野々村さんはどこか思い詰めたような表情をしていたのも少し気になった。



「私は……何か……」

「何……?
なにがあるって言うの?
純平君も言ってたけど、シュウさんはけっこうはっきりした性格みたいだし……」

「ねぇ、美幸さん……
だったら、どうしてシュウさんはタカミーさんにはっきりそう言われなかったんでしょう?
それに、今回のことだって……どうして直接じゃなくて、純平さんに言わせたのかしら?」

「……それは……」

野々村さんにそう言われて、私は返す言葉に詰まった。
確かにそうだけど……でも、そんなこと、私にわかるわけないじゃない。
シュウさんの気持ちなんて、私には何もわからない……