「も、もしもし。」

「おぉ、野々村さんが電話をくれるとは珍しい。」

「あ、あの…今、話してて大丈夫ですか?」

「あぁ、今日は仕事が思ったより早くにあがったんで、もう家におるんじゃよ。
なにかありましたかな?」



美幸さんとシュウさんのことをどうしても話したくて、私はKEN-Gさんに電話をかけた。
お忙しい方だからメールの方が良いかとも思いつつ、文字にすればかなりの長文になりそうだったし、やっぱり電話でお話したかったから。



「実は…シュウさんとみゆ…ひかりさんのことなんですけど……」

「なに、シュウとひかりの?
二人になんかあったのか!?」

「え、ええ…!!」



私もつい嬉しくて、あの日、シュウさんがひかりさんを家まで送って下さったこと、そして、プライベートの名刺を渡されたことを話した。



「な、なんと、シュウがそんなことを…!?
野々村さん…それは、やはり今でもシュウの心の中に、ひかりの記憶が残っているということだと思うか?」

「よくはわかりませんが…やっぱり魂に刻まれた記憶のようなものがあって、お二人が出会ったことでそれが少しずつよみがえって来てるんじゃないでしょうか?」

「魂の記憶か……
うん……そうかもしれんな!
そうか、そうか、ひかりとシュウがのう……
実はな、先日、タカミーにシュウのアドレスを教えたことで、シュウには叱られたんじゃよ。
プライベートなメアドや電話番号は、俺が納得した相手にしか教えたくないんだって、きつくな。
それを自ら教えたんじゃから、やはりひかりには特別な感情を持ってるということじゃな。
そうか、そうか……」

KEN-Gさんもやはり私と同じお気持ちのようで、心底喜んでらっしゃるのが電話の声からもとてもよく感じられた。



「本当に良かったです。」

「そうじゃな……それで、その後、二人はどうなんじゃ?
進展してるのか?」

「えっ!?いくらなんでもそんな急には……
第一、ひかりさんは、シュウさんにそんなことをされたことですごく戸惑ってらっしゃいましたし……」

「でも、シュウに電話くらいはしたんじゃろう?
送ってもらったお礼に……」

「それが…なにしろ、ひかりさんは動揺されてて、まだ連絡はなにもされてないようでした。
あんまり早急にああしろこうしろっていうのも逆効果かなと思って、しばらく様子を見たらどうですかって言ったんです……
でも、やっぱりお礼だけは言われた方が良いですよね。
……KEN-Gさん!私、今からまたひかりさんに連絡してみます!」

いてもたってもいられない気持ちで私は電話を切り、すぐにひかりさんにかけ直した。