「そ、そっか…
そうじゃないかって思ってたんだ、実は。
だ、だけど、シュウさんも意外と慌て者なんだね。
全然そんな風に見えないけど……」

「そうだね。
シュウさんはしっかりしてるからね。
相当飲んだって、ミスらしいミスがない完璧な人なんだ。
だけど、あの時は高見沢さんが来てたじゃない?
シュウさん、ベタベタされるのがとにかく嫌いなんだ。
で、あんまりべたベタする人にはけっこうはっきり言っちゃうんだけど、高見沢さんは大河内さんの友達だし、それで言いにくくてかなり我慢してたみたいなんだよね。
で、ひかりちゃんが帰るのを良いことに、送りに行く口実を作って高見沢さんから逃げたみたいだよ。」

「は……な、なるほど……
なんかからくりがあるとは思ってたけど、そういうことか~……」



だよね?
そんなことでもなきゃ、シュウさんが送ってくれるはずなんてないよね。
これで何もかも納得出来た。
シュウさんが私を送ってくれた理由も、プライベートの名刺をくれた理由も……



「ひかりちゃん、気をわるくしないでね。」

「ば、馬鹿言わないでよ。
私も大方そんなことじゃないかって思ってたから、却ってすっきりしたよ。
それに、送ってもらったお礼ってなにかしないといけないのかどうなんだろうって心配してたんだ~!」

「あぁ、そんなことなら気にすることないよ。
ひかりちゃんは大河内さんの知り合いなんだし……」

なんだかその言葉が耳に残った。
それは……私がおじいさんと仲良しだから、シュウさんも純平君も優しくしてくれてるってこと……?



私って馬鹿だな……
今頃、そんなことに気付くなんて……



当然じゃない。
私みたいな何の取り柄もない女の子…
ごく普通にお店に遊びに行ってたら、きっともっと相手にしてもらってないはずだ。
純平君が、私にこんな風に電話をくれるのも、私がおじいさんと仲良しだから。
お互いアニメファンってことで気が合うからでも、おしゃれをして、今までよりちょっとマシになったからでもなんでもないんだ。