「おぉ、おぉ…よく来てくれたひか…!
いや…青木美幸さんじゃったな。」

玄関で出迎えて下さったのは、美幸さんと同じくらいの背丈の小柄なおじいさん。
全くの日本人だった。
おじいさんが着ているものは、ファンタジー映画の魔法使いが着ているようなローブ…と、思ったけれど、よく見るとそれは和服だった。
おじいさんは、美幸さんをやたらと見て、とても嬉しそうな…そして、どこか驚いたような表情をされていた。



「とにかく来てくれてありがとう…!
さぁ、中へ……って、あれ?
今日は確か四人で来る筈じゃなかったか?」

「あ、そ、それが……」

美幸さんは焦ったような困ったような顔で、私をみつめる。



「あ、あの…初めまして。
私、野々村美咲という者で、美幸さんと親しくさせていただいております。
本日は、美幸さん達がこちらのお食事会に招かれたことを知らず、のこのこと遊びに来てしまいまして、ちょうど青木さん…あ、美幸さんのお兄さんですが、その方達が急な仕事で遅くなるとのことで、美幸さんはその…人見知りされるので、心配で勝手に着いて来てしまいました。」

私は、間違えないように懸命に…考えていた言い訳を一気に話した。



「……野々村さん…」

美幸さんのか細い声に、私は小さく頷いて…



「そうか、そうか、
美幸のことを考えて…ありがとうよ、野々村さん!」

おじいさんは私の手を握り締め、とても嬉しそうに微笑んだ。
私はなにも喜ばれるようなことは言ってない筈なのになぜかしら?
その様子は、まるで、おじいさんは美幸さんの本当のお祖父さんみたいに思えた。
あらっ?そういえば、今、美幸さんのことを呼び捨てにされなかった……?



「さぁ、どうぞ。
食堂はこちらでぇす!」

そんな疑問をゆっくりと考える間もなく、甘い声のメイドさん達が先に立って、私達をお屋敷の奥へ案内して下さる。
私達はまだどぎまぎしながら、メイドさんの後をくっ付いて行った。