……って、おかしいじゃないか。
そんなこと、何がなんでも知りたいって感じのものじゃない。
あの子がKEN-Gの隠し子だろうがどうだろうが、そんなことは俺には関係のないことだ。
なのに、どうして、こんなにあの子のことが頭から離れないんだ?



(あ……)



その時、ふと俺の頭の中を淡いピンク色の石がかすめて飛んだ。
あの子がつけていたペンダントの石だ。



不思議と気にかかる石だった。
もちろん、俺の好きな色なんかじゃない。
石の名前すら知らない。
今まで俺が女性にプレゼントして来た宝石の中には、あんな優しいピンク色はなかった。

なのに、なぜだか……そう、なぜだか懐かしい気がしたんだ。
俺がすでに忘れてしまった子供の頃の記憶なんだろうか?
俺の母親は、ああいう色は好まなかったはずだが……



「あぁっ!何やってんだ、俺は…!」



どうでも良いことをぐだぐだ考えている自分自身に、俺は妙に苛ついて大きな声を出してしまった。
そもそも、なんで、あの子のことなんか……
……あぁ……そうだ。
純平があんなことを言うから。

純平は、あまり営業活動をしない。
だから、指名客もそんなにいない。
あいつは人一倍真面目で、どんなことも気を抜かずに頑張っていることを俺は知っている。
元はといえば、俺が拾ってあそこまで育て上げた奴だ。
特に可愛いことは言うまでも無い。
なのに、さっき感じた違和感は何だったんだろう?
あいつが、営業をやってるとわかったら、本来、俺は喜ぶはずなのに、なにか少しいやな気分がした……



おかしい……
どうも、変だ…
あのひかりが絡むと、どうも調子が狂ってしまう。
……ひかり……



(そうか!)



俺の店の名前はルーチェ。
イタリア語で光を現す。
カズさんがいくつか考えてくれた候補の中から、俺が一番気に入ったのがそれだった。

知らず知らずのうちに、俺はひかりという名前と店のことを重ね合わせていた。
だから、なんとなく気にかかってただけなんだ…



(……きっと、そうだ。)