「す、すごいですね…」

「う、うん…」



お屋敷までは、ゆっくり歩いて十五分程。
見えてはいるのだけれど、歩いてみるとそれなりに時間がかかる。
間近で見たお屋敷は、そりゃあもう芸能人か政治家のお宅かと思う程、大きくて立派なもので、私も美幸さんも門の前ですっかり怖気付いてしまった。
表札にはしゃれた字体で「KENーG」の金文字。
もしかして、外国人?もしくは海外でお生まれになった方なのかしら?



「み、美幸さん、私、こんな格好で良かったんでしょうか?」

「そ、そんなこと言ったら、私なんてもっと…」



大きな門の先には趣味の良いお庭が広がり、その奥にある玄関はなんだか高級な料亭か旅館みたいな佇まいで…
なんだか破格の料金を取られそうな錯覚に、私の足が停まった。



「ど、どうしましょう、美幸さん。
なんだか、ものすごいお屋敷過ぎて、私……」

「私も……
どんな人が住んでるのかも知らないし、野々村さん…どうしよう!?」



「いらっしゃい。
待っておったぞ。
さ、さ、中へ…」



「ひっ!」



どこからか不意に響いた声に、美幸さんはおかしな声を上げて私の腕に抱き着いた。
それと同時に、鉄の門がゆっくりと開いていき、玄関の扉が開いて純和風の庭とは不釣合いな二人の若いメイドさんが手を振りながら現れた。



「いらっしゃいませ、お客様~!」



(な、なぜ、こんな所にメイドさんが?)



私も美幸さんも、あまりにも予想外な目の前の光景にあっけにとられ、呆然としている所へメイドさん達がこぼれるような笑みを浮かべて駆け寄って来る。



「あ、あのっ…」

「わわ……」



混乱する私達をさして気にすることもなく、メイドさん達は私達をお屋敷の中に案内して下さった。