「おはよう。」

「おはよう、美幸ちゃん!」

「おはよう!」



次の朝、三人の男達はいつもとまるで変わりはなかった。



「……美幸…また、そんな服を着て…
もう少しマシなものはないのか?」

「え…だ、だって……
私…マシな服って、昨日のしかないし……」



朝からこういういやみを言うのも、いつもの兄さんだ。
すずめの涙程のバイト代しかくれないくせに、服なんてそうそう買えるか!……と、心の中で怒鳴りつつ、怖いからそんなことは言えない。
なんせ、ここに置いてもらえなかったら家に連れ戻されるんだから。
私には、一人で暮らしていけるだけの甲斐性はないわけだし、ここはぐっと我慢するしかない。



「なんだ…あれしかないのか。
困った奴だ。
……じゃあ、近々、買ってやるから、もうそういうのは着るな。
せっかく髪型もおしゃれにしてもらったのに、そんな服じゃ似合わないだろう?」

私は黙って席に着いた。
着るなって言うなら、服を買ってからだろう……
……っていうか、髪型をおしゃれにしてもらったっていうのは当然タカミーさんのことだと思うけど、昨夜、彼女をあんな風に言われたのに、兄さんはタカミーさんのこと、怒ってないのかな?



「ねぇ、兄さん…
昨夜のあの人…アンリさんだっけ?
大丈夫だったの?」

「もちろんだ。
アッシュが無事に家まで送り届けてくれた。」

兄さんは私の顔も見ず、さらっとそう言った。



「……そうじゃなくて。
ほら…タカミーさんが酷いこと言ったじゃない。
だから……」

「あんなことは冗談だ。
そりゃああの時はアンリも取り乱してはいたが、落ちつけばそんなことはすぐにわかる。
おまえが心配するようなことじゃない。」

兄さんが鋭い視線で、私を睨む。
あ~あ、つまらないこと言わなきゃ良かった。
それにしても、この人やっぱり変だ。
彼女があんなこと言われたら、普通怒るよね?
しかも、自分は追いかけもせずアッシュさんに代わりに行かせて、その上、昨日のあれは冗談だったなんて……
アンリさんも本当になんとも思ってないんだろうか?
……なんか、ついていけない人達だ。