「本当にすまなかった。
この埋め合わせは必ずするから……」

「カズ……」

アッシュはコーヒーカップから口を離し、俺の顔をじっとみつめた。



「……どうした?」

「カズ…彼女のことは気にならないの?」

「え……?
あ…あぁ、でもそれなら、おまえが無事に送り届けてくれたって……」

アッシュは、黙ったままでゆっくりと頷いた。



「……そっか……
やっぱり、あの子のことは本気じゃないんだね…?」

「そ、それは……」



言葉に詰まり、それ以上、俺は何も言えなかった。



「ねぇ、カズ…
だったら、なぜ、彼女を家に呼んだの?
僕達、女性を家に呼ばないことは暗黙の了解だったじゃない。
だから、彼女を呼ぶって聞いた時、僕達、密かにびっくりしてたんだよ。」

「そ、そうだったのか……ごめんな。」



いくらマイケルやアッシュにでも、本当のことは言えない。



「実はな……
酷い話なんだが……その…アンリは高見沢避けに誘ったんだ……」

「高見沢避け……!?」

二人は顔を見合わせたかと思うと、次の瞬間、同時に噴き出してげらげらと笑い始めた。



「おい、そんなに笑うことないだろ?
俺、けっこう真剣に困ってたんだぜ。」

二人が笑ってくれたのを良いことに、俺はちょっと大袈裟にそう言った。



「そ、それにしても、カズ、酷いよ…高見沢避けって……」

「彼女に失礼だよ!」

二人は大きな声で笑いながらそう言った。



良かった……
どうやら、俺の嘘を信じてくれたようだ。
酷い男だと思われるくらい、なんともない。



大河内さんに負けた惨めな男だと思われるよりは、ずっとマシだ……