「マイケル……やっぱり、俺、見て来るよ。」

「大丈夫だってば。
まだ心配するような時間じゃないよ。」



マイケルは食器を洗いながら、俺に小さく目配せをした。

あれからすぐに車が来て、大河内さん達は各々家に戻って行った。
なんともいえない沈んだ気持ちから抜け出せず、俺がぼーっとしている中、美幸とマイケルはあたりをせかせかと片付け始めた。
あらかたの片付けが済むと、美幸は部屋に引っ込み、マイケルは鼻歌を歌いながら食器を洗い始めた。
俺は、腑抜けのように座りこんだまま、煙草をくゆらせるだけで……

傍目には、俺がのんびりしてるように見えるかも知れないが、心の中は全く違う。
何かしなければとも思っていたし、アッシュのこともとても気になっていた。
大河内さんにはきっと馬鹿にされただろうし、もしかしたら野々村さんと会って、俺の悪口を言ってるかもしれない…なんて被害妄想染みたことまで考えて、俺の心の中は酷く苛々していた。
だからこそ、立て続けに煙草に手が伸びる。



(もしかしたら、マイケルは俺の心の中なんて、とっくにお見通しかもしれないな…)



そう思うと、急に恥ずかしさが込み上げる。
とにかく、落ち着かないと……
なのに、俺はまたつい時計を見上げてしまった。



「マイケル…俺、やっぱり……」

立ち上がり、そう言いかけた時に、チャイムが鳴った。
俺はそのまま玄関に向かって走リ出した。



「ただいま!」

「アッシュ!無事だったか。」

「無事?あったり前でしょ?
あ、彼女はちゃんと家まで送り届けて来たからね。」

「あ…ありがとう。
本当にすまなかったな。
疲れただろう?
お茶でも淹れるよ。」

「え?」



アッシュはどこかおかしそうにして小首を傾げた。



(……俺…何か、おかしなことを言ったか?)



俺にはわけがわからなかったが、とにもかくにもアッシュの顔を見た事でずいぶんと俺の気持ちは落ち着いた。