(ええーーーっ!?
どうしよう…)



ある日、いつものように美幸さんから届いたメールを見て、私はどう返事をしたものかと悩んでいた。
それはいつもの他愛ないメールとは少し違って…
なんでも、例の大豪邸を見に行ったアッシュさんが、そこのご主人と知り合い、お近づきの印にと食事に招かれたらしいのだけど、その食事会が今日だそうで…
もちろん、呼ばれたのはマイケルさんとアッシュさんと青木さんと美幸さんの四人。
だけど、三人は急な仕事が入って少し遅くなるから、美幸さんに先に行くように頼まれたのだとのこと。
とはいえ、知らない人のお屋敷に一人で行くのは心細い。
だから、私に一緒に行ってほしいとのことだった。

そんなことくらいお安いご用だけど、私はご近所さんでもなければ招待されたわけでもない。
もし、食事が四人分しか用意されてなかったら、私のせいで一人があぶれてしまう…
だったら、お屋敷の前まで付き添ってあげれば…いや、そんなんじゃ、意味がない。
美幸さんは、見ず知らずの人と接することを困っているのだろうから…



悩んでいると、不意に携帯の着信音が鳴った。
画面には、美幸さんの名前が出てる。
今まで、メールばかりで電話はかかってきたこともかけたこともない。
私は少し緊張しながら、電話に出た。



「は、はい、野々村です。」

「こ、こんばんは、美幸です。
あ、あの…メール、見てもらえましたか?」

「は、はい、見ました。
で、でも、わた…」

「お願いします!
私、一人じゃ行けないし…
でも、兄さん達が帰って来るまで待ってたら、あちらをお待たせすることになるから、また兄さんに叱られると思うし…
お願いします!」

その声は、とても切羽詰った様子で、まさに藁にもすがる想いで私に電話をかけて来たのだろうと思った。
美幸さんにとっては、私に電話することもちょっと勇気のいることだと思うし…



「わ、わかりました。
じゃ、今からすぐそちらに向かいます。」

美幸さんの気持ちを考えると、断るわけにはいかない気がした。
あちらには、私が厚かましく美幸さんに着いて来たことにして、青木さん達が来られたらすぐにお暇すれば良い。

私はすぐにタクシーを呼ぶ電話をかけた。