「わぁ……」



しばらくして、高見沢大輔が引っ張って来た野々村さんは、また一段と進化を遂げていて……
髪はアップにまとめられ、なまめかしい色香に俺はまた顔が熱くなるのを感じた。
他の皆も一様に呆然と立ち尽し、そのまま言葉を失った。



「なぁに、みんな……
何か感想はないの?」

「す…すごい!
プロのメイクがすごいことは知ってたけど……タカミーの腕は本当にすごいや!
ちょっとした整形みたいだね!」

アッシュはそう言いながら、野々村さんに近付きその顔をあちこちからながめまわす。



「整形じゃないわ。
私のは『魔法』よ。
そこらへんのメイクさんと一緒にしないで!」

高見沢大輔は、両手を腰に当て、おどけた様子で胸を張る。



「……本当に綺麗。
さっきも綺麗だったけど…野々村さん、まるでモデルさんみたいだよ!」

美幸が興奮した様子で声をかけた。



「美幸さんったら……からかわないで下さいよ。」

「本当だよ!」
「本当ですよ。」



美幸の声に被さったのは意外にも俺の声だった。
野々村さんと美幸が、驚いたような顔で俺を見ていた。
だけど、一番驚いたのは俺自身だ。
俺ったら、またなんでそんなことを……



「あ…いや……その……
だから……本当に綺麗ですよ。
野々村さん…あなたはもっとご自分に自信を持つべきだ。」

「え……あ…あの……」

俺はまた偉そうなことを言ってしまい、野々村さんは途端におろおろと落ちつきをなくした。



(困らせるつもりなんてなかったのに……
だいたい、俺はなんでそんな偉そうなことを……)



「いやん!カズったら、校長先生みたい!」

そう言って、高見沢大輔が俺の背中を威勢叩き、おかげでその場は明るい笑い声に包まれた。



「校長って……せめて教頭にして下さいよ。
って、そんなことより、みんな集まったんですから乾杯しましょう!」

「そうね!
私、ワイン持って来たのよ!」

雰囲気を壊さないように、俺はちょっとした冗談を口にして……
そして、高見沢大輔の持って来た高値なワインを早速いただくことにした。