「……なんだか明日のことが楽しみになって来たよ。
タカミー、どう言ってくれるかなぁ?」

オムライスを頬張りながら、美幸さんはとても晴れやかな顔で微笑まれた。
だけど、私の気持ちはそれとは裏腹で……
だって、明日はあんなに可愛らしいワンピースを着なきゃいけないんだもの。
美幸さんと二人であれこれ探して、最終的に美幸さんがおすすめして下さったのが、マキシ丈のピンクのワンピース。
確かにデザインは素敵なものなんだけど、そのピンクがちょっと紫がかったけっこうなまめかしい色で、色だけで圧倒されてしまうっていうのか、普段なら絶対に着ない色だからすっかり怖気づいてしまった。
しかも、裾の方はレースになってて……
美幸さんに促されて試着してみたら、やっぱりいつもの私とは違い過ぎて鏡を見ることさえ恥ずかしくって、外から美幸さんに急かされてもなかなか外に出られない程だった。
なのに、美幸さんはそれをたいそう気に入られた様子で、それにするか、美幸さんとおそろいにするかだと詰め寄られ……
いくらなんでも、あんな若々しい服は私には似合いそうにないからワンピースにしたものの、ワンピースの方も相当きつい……



(明日、出掛けにコーヒーかなにかこぼして、急遽着て行けなくなった……なんて言ったらどうかしら?
……やっぱりそんなの駄目よね。
美幸さんだって、勇気を持っていつもなら絶対に着ないような服を選ばれたんだもの…
……でも、美幸さんは似合ってらっしゃる。
私は、似合いもしない…だったら……)



そこで私は不意に思い出した。
そうだ、明日は青木さんの彼女さんも来られるんだ…と。
きっと、私なんかとは比べものにならない素敵な人……
だったら、この際、思いっきりずっこけた方が良い。
いい年をしたおばさんが、タカミーさんの髪をいじってもらったからって、似合いもしない服を着て頑張ってたら、きっと笑ってもらえる。



(そうね……
憐れみよりは笑われた方がまだずっと救われる……)



明日はちゃんとお化粧もして行こう!
そうよ…思いっきり道化になろう……!

私の心の中に、そんな決意が固まった。