「ご、ごめんね!
本当にごめんなさい!」

「え……?
あ、あぁ、そんなこと、気にしないで下さい。」

考え事をしていた私のことを、怒ってると勘違いされたようで、美幸さんは焦った顔で頭を深く下げられた。
美幸さんの様子を見ても、やっぱりあの眼鏡と髪型を変えてから私の雰囲気が変わったことは間違いないようだ。



(……そんなに簡単なことだったんだ……)



「……野々村さん?」

「あ…す、すみません、ぼんやりして……
じゃあ、行きましょうか?」



行きましょうかとは言ったものの、私も美幸さんも特に行き付けのお店なんてない。
私は、最近は適当に見かけた入りやすそうなお店でばかり買っていた。
だから、今回は少し気合いを入れて、駅前のおしゃれなファッションビルを見てみることに決めていた。
私も美幸さんも普段なら前を通り過ぎるだけの建物だ。



「……なんか、入りにくいお店ばっかりだね。」

「そうですね。」

今日の私達は、髪型だけはお蔭様でいつもよりは多少マシだとは思うけど、服装はいつもと変わり映えのしないものだったから、場違いな気がしてとても居心地が悪い。



「高いお店は無理だよね。」

「ええ。
でも、ネットで見たところでは、けっこうお安いお店もあったんですよ。
あ、あそこなんかそうですよ。」

私が指差したお店は、明らかに若い女の子向きのお店だった。
私には無理としても、美幸さんには合うんじゃないかって考えてたのだけど、ざっと見渡した所、サイズ的に入らないっていうのが一目でわかった。
どれもこれもすごく細身。
美幸さんもそのことはすぐに感じられたようで、私達はすごすごとそのお店の傍を離れた。



「えっと、確かこの上の階にも安いお店がありましたよ。」

私達は、その後も何軒かのお店をのぞいてみた。
だけど、どこもいまひとつ私達に似合いそうな服を置いたお店はなく、店員さんも私達には声さえかけてくれなかった。