(でも……)



却って良い機会かもしれない。
青木さんと彼女さんの仲睦まじい様子を目のあたりにしたら、私も青木さんのことをすっぱり……ではないにしろ、諦められるかもしれない。
きっと、彼女さんはお若くて美人で素敵な人だろうし、私なんか足元にも及ばないってことを実感して……
そうしたら私も、KEN-Gさんと協力して、シュウさんと美幸さんを元のラブラブなカップルに戻してあげることだけを考えられるようになるんじゃないだろうか……


そうよ、そうするべきなのよ。
……それに、美幸さんは私がいなかったら、話し相手もいなくて寂しい想いをされるだろうし…
行かなきゃ!
やっぱり、私は行かなきゃならないんだわ!



私は、その決意が固まると同時に美幸さんにメールを打った。
美幸さんからはすぐに返事が来て、私が行くと言ったことをとても喜んで下さった。
そして、今日、洋服を見に行かないかと書いてあった。



『私は構いませんが、でも、どうしてですか?』

『だって、タカミーが来るんだよ?
タカミーに髪をやってもらってから、私達の意識が変わったって所を見せとかないと怒られそうじゃない?
それに、どうせ、今度シュウさんのお店に行く時にはもうちょっとマシなもの着ていこうって決めてたじゃない。
その予行演習とでもいうか…タカミーだったら、はっきりおかしいとか似合ってないとかも言ってくれそうだから…』

美幸さんはやっぱりシュウさんのお店に行く事を楽しみにされてらっしゃるようだ。



(良かった……)



新しい服を着て出掛けると、気持ちがリフレッシュする。
これを機会に、私もいつもよりちょっとマシな服を着てでかけるのも良いかもしれない。



(そういえば、最近は新しい服もほとんど買ってなかった……)



考えれば考える程、私は長い間女を捨てて生きて来たんだってことを思い知らされた。



(……ずっとそのままだったら、却って楽だったかもしれないのに…)

そんなことをふと考えてしまった自分自身に、自嘲めいた笑みがこぼれた。