(……眠れない…)

私は天井をみつめ、大きな溜め息を吐き出した。



眠いはずなのに、神経が高ぶってちっとも眠れない。
でも、そうなるのも当然だ。
あんなことを聞いたんだもの。
冷静でいられないのも当然だわ。



私の知らない所でそんな奇蹟みたいなことが起きてたなんて、今でも信じられない……



でも、これは明らかに現実……
シュウさんとKEN-Gさんは元はといえば美幸さんの小説のキャラクターで、今は完全のこの世界の人間として生きていて、そして、そのことを記憶しているのはKEN-Gさんだけ。
シュウさんにはその記憶は全くない。
それから、シュウさんが最初にこっちの世界に来られた時に接触した方々の記憶からもシュウさんに関する記憶は一切消えている…いや、その事実そのものがなかったことにされている…と。
だから、青木さんや美幸さんはシュウさんのことを一切覚えてらっしゃらない…
青木さん達には、シュウさんとは出会われなかった五年間があらたに現実として存在し、なのに、私はシュウさんがこちらに来られたことを知っている…
そのことは何度考えてもとても怖い…

うまく合流して何事もなく過ごしてはいるけれど、私と青木さんは一部だけ違う時間の流れを歩んで来たことになるんだから。

まさに、奇蹟だ…
奇蹟以外の言葉がみつからない。



でも、KEN-Gさんと話し合えて本当に良かった。
少なくとも、真実を知ってる人がこの世に二人はいるわけだから。
この秘密は一人で抱えるには重すぎる。

そういえば、もしもあの小説が公開されていて、たくさんの人の目に触れてたらどうなってたんだろう?
今の事態は変わってたんだろうか?

まだまだわからないことだらけで、これから先どんなことになっていくのかと考えると、私はますます目が冴えてしまった。