「なんで、男の人って見た目にばっかり惑わされるんだろうね…」

「それは、その……まぁ……そういう男ばかりではないとは思うが……」

おじいさんが自信なさげに呟いた。
おじいさんが若い頃なら、今とは少し事情も違ったかもしれないけど…
でも、きっとそう大差はないはずだ。
昔の今も、男の人は綺麗な女の人が好きなんだ。



「いや、そういう男が大半だと思うよ。
うちの兄さんだって……そ、そうなんだ、聞いてよ!
兄さんったら、昨日、合コンに行って、そのままモデルさんと……そ、その…お持ち帰りってやつで……その…とにかく朝帰りだったんだよ!
妹の立場とすれば、やっぱりどうかとは思うけど、でも、ま、兄さんは独身なんだし、悪いとも言えないよね……
でもね、その人となんかちょっと揉めたかなんかしたらしくって、今朝はとっても機嫌が悪くってさ。
私、朝からつまらないことでがみがみ怒られて……完全な八つ当たりなんだよ。
それで、今日も野々村さんに芝居を頼んで、会社まで迎えに来てもらって……」

「……そうだったんですか…それで……」

「昨夜は遅くなったからのう…
わしが電話の一本もかけておけば良かったのう。
……そうじゃ、今からでも…」

おじいさんは、バッグの中に手を突っ込んだ。



「あ!だめだめ!!
今日は野々村さんと二人で会ってることになってるんだから……」

「え……?
なぜなんじゃ?」

「そ……それは……」

まずいことを言ってしまったと思ったけど、おじいさんが兄さんに電話をしたらもっとまずい。
どうしようかと焦りつつも、やっぱり下手な嘘を吐くよりは正直に話しておいた方が、後々良さそうに思えて、私は思いきってすべてをぶちまけた。
おじいさんは親戚でもなんでもないんだから、迷惑をかけてはいけないと兄さんに言われて、今日も嘘を吐いて出て来たということも洗いざらい。