おじいさんは、約束していたDVDだけじゃなくて、他にもほしいものはないのかと言ってくれて……
だから、前からちょっと気になってたDVDを三枚と今遊んでるゲームの攻略本を買ってもらった。
遠慮しなくて良いと言ってくれて本当に好きなだけ買ってくれそうな雰囲気ではあったけど、いくらなんでもこれ以上買ってもらったら申し訳なさ過ぎる。
おじいさんが私達のことをそんな風に考えててくれてたなんて思うと、ますます心が苦しくなってくるし……
もしかしたら、おじいさんは私達のことを孫のように想ってくれてるんだろうか…?



「あ…そうだ、美幸さん…
昨日はなぜご自分のことを『ひかり』さんと名乗られたんですか?」

「えっ!?……あぁ、実はね…
ああいう所って初めてだったし、なんか本名を言って大丈夫なのかな…なんて思って、とっさに…」

実は、自分の名前が昭和っぽくてちょっとあの場所では言い辛かったっていうのもある。
って、その前にこんな服装で行ったんだから、名前がどうこうって問題じゃなかたかもしれないけど…




「……あれは咄嗟に考えられた名前だったんですか?」

「う~んと……
咄嗟っていうか……実は、ネットで使ってたハンネなんだよね。」

「あ!もしかしたら小説を書かれる時のペンネームですか!?」

「……う、うん、まぁ……」

野々村さん…おじいさんの前でそんな事言っちゃ……



「ほぅ…美幸は小説を書いておるのか、それはたいしたもんじゃな。
それに、『ひかり』とはなかなか良い名じゃ。
わしもこれからおまえさんのことをそう呼んでも良いかな?」

「え……ま、まぁ良いけど……」



ひかりなんて呼ばれたら照れ臭いけど、でも、なんだか嬉しくもある。
何をやってもだめだめな美幸とは、ちょっと違う人になれるような気がして……



「あ!そうだ!
おじいさん、昨夜のシュウさんって、かんざきしゅうとって名前なんだよね?」

「いかにも、その通りじゃよ。」

おじいさんはそう言うと、バッグの中から一枚の名刺を取り出し、テーブルの上に置いた。