「シュウー!
こんな所にいたの!?
酷いじゃない…私をほったらかしにして…」

「亜理紗!
失礼だぞ!
ここは大河内さんの部屋だ!」



(え……!?)



かなり酔っ払った雰囲気で部屋に押しかけたその女性は、露出の多い派手な服装をした…
そう、以前一度だけお会いしたことのあるあの亜理紗さんだった…!



「連れて行け!」

シュウさんは、亜理紗さんの傍でおどおどしている若いホスト達さんに、厳しい声で指示した。



「なによ…私だって忙しい所をわざわざ駆け付けて来てあげたのに、こんな……あら…?」

亜理紗さんと目があって、私は慌てて俯いた。



「あれ……おばさん…あんた、カズの職場のおばさんじゃないの?」

「亜理紗、おまえ…」



立ち上がったシュウさんを制して、ジョーさんが立ち上がる。



「亜理紗、おまえはこっちだ。」

ジョーさんは、亜理紗さんの腕をがっしりと掴んだ。



「な、なによ!
痛いじゃない!
離してよ!離してってば!」

ジョーさんは、亜理紗さんが暴れても掴んだその手を離す事はなく、そのまま部屋を出て行った。
扉を閉めてもしばらくは亜理紗さんの罵声が聞こえていたけど、それもじきにだんだんと小さくなって……



「お騒がせして申し訳ありません。」

「……シュウよ、おかしな女には関わらんことじゃ。」

「も…もしかして、亜理紗さんと熱愛中のホストって…」

そう言って、美幸さんはシュウさんのことを上目遣いでみつめられた。
美幸さんの言葉で私も思い出した。
そういえば、亜理紗さんは青木さんとのスキャンダルの後、新恋人と熱愛中とまた週刊誌に書かれていたって、美幸さんが以前話されていたことを。
でも、まさか、そのお相手がシュウさんだったなんて…
あの件のせいでドラマは降板されたけど、亜理紗さんは今度映画に主演されるとか、最近ちらっとネットニュースで見た気がする。



「……そりゃあ何もなかったとは言わないけど、俺は亜理紗の恋人なんかじゃないよ。
こっちに来る少し前から店に来るようになってね。
とにかく、積極的っていうのか押しの強い子だから…
俺が一人立ちしてこっちに来たら、縁も切れると思ってたんだけど、追いかけて来て…
あ、美咲さん…あいつと知り合いなんですか?
それに、カズさんの職場って…」

「わ、私は、以前、青木さんとお仕事の関係で会ってる時に亜理紗さんに一度だけお会いしたことがあって……」

「青木さん……?」

「あ、あの……以前、亜理紗さんとのスキャンダルを書かれたあの青木さんです……」

美幸さんの前でこんなことを言うのは心苦しかったけど、黙っているのもおかしいし、却って、美幸さんがお辛いかなと思い、なるべくさらっと私は答えた。