「はぁ…っ、はあ」

男は走っていた。

疲れのせいで足がもつれる。

心臓も壊れそうな程に痛かった。

しかし――今自分が止まるわけにはいかないのだ。

背中には愛しの姫がおぶさっている。

息を詰めて俺の肩に懸命にしがみついている彼女。

彼女は天皇の妻に成るべきお人。

それでも、恋をしてしまった。

初めに垣間見たときから、消えることのない熱情。

何度思い知らされても、諦められなかった。

故の、いわば駆け落ち。

身分違いのこの恋、成就するかは今の自分に懸かっているのだった。