あの人はずいぶん綺麗な人だと思った。綺麗な人。それが第一印象だったし、その先も変わらなかった。
榎本翔貴。
さらさらな黒髪に、眼鏡。眼鏡は度が入っているのか怪しかったが、似合っていた。
「これ、お願いします」
「はい」
図書委員のいいところは、こうして受付が出来ることだ。
先輩後輩関係なく、面と向かって話せる。まあ、話せるといっても返却日がいつかとか、そういうのだが。
今日は来るだろうか。
――――初めてあったとき、彼は図書室にいた。いつもならほとんど人の姿がないそこに人の姿があった。こんな学校にあんな人がいただろうか。記憶になかった。
ここは私立の学校でも進学校なんでもない。普通の学校だ。
ただ、辺鄙な土地であり、数年の間に統廃合してしまったこともあって――――統合されてしまった方の中学生に関しては全くわからない。地元の中学ならばなんとなくわかるが……。
後に知ったのは、彼はやはり統廃合となった中学から来た人だということだった。
人気なんだろうな、と思う。