朝起きて窓を開けると。
雪が降っていた。
「そっか。昨日、寒かったもんねえ」
思い出したように寒いと呟いて、
暖房を入れる。
寒いけど、雪は好きだから。
なんとなく浮足で玄関を開けた。
「心実ちゃん、おはよう」
「あら心実ちゃん。早いのね」
「おばちゃん達、おはようございます」
みんなに挨拶して。
新聞をとる。
「ああそうだ心実ちゃん。ミカン食べない?ミカン。甘いの」
「いります!」
「心実ちゃんは、小さい時からおミカン好きねえ」
『あら彰吾くん。元気?』
『今日もイケメンねえ。おミカン食べる?おミカン?』
『えっ。はっ、……どうも』
『心実ちゃんにもあげるわね』
『ありがとう、おばちゃん!』
おばちゃんのむいてくれたミカンは、
手の温度が移っていて。
温かい。
『おうわ。このミカン生温かい……』
なんて文句言いながらも。
彰吾はミカンを完食した。
ミカンを見るたびに思い出してしまう。
彰吾との思い出はかけがえのないもの。
あの人はいつだって優しいから。
〜〜♪
また、携帯がなる。
あ、阿久津くん。
『彰くんが高橋芽衣と付き合うらしい』
やっぱりなって思った。
いつかこうなると予感してた。

