夜道を歩く。

夏の夜はなんだか嫌い。

星もなんか濁って見えて、
全然綺麗じゃない。


街もうるさい。

カラオケ、コンビニ、ファミレス。

昼と変わらない。





静かなとこに行きたい。





でも、どこかに行きたいのに、
行きたい場所が見つからない。






ここはどこだろう?







サンダルの穴から砂が入ってる。

波の音がする。

あ、水が冷たい。











ああ、ここは。
















「心実」














浜辺に座ってる私の前に、
彼が立っていた。












「こんなとこで何してるの?」









そう優しく笑う晴太。













「晴太…晴太!今までどこにいたの?」

「え?……ああ、うん。」

「心配したんだよ!彰吾も私も」

「………ゴメンね。ありがとう」









よかった。

君がいくれて。

それだけで、充分な気がした。












「……晴太。それ…」





隣には大きな荷物があった。

なんだか旅に出るみたいな。

そんな、重そうな大きな鞄。







「どこかに、行くの?」

「……うん?帰ろっかなって、思って………」

「帰るってどこに?」

「元いた街に」

「え?」

「おじさんと住んでた街に帰るんだ」





私は。羨ましかった。











「いいな。私も行きたいな」









私には何もない。


ポッケにはチョコが一つ。



電車に乗れるお金もない。








にっこり微笑んだ晴太は
私の手を取り浜辺を歩き出した。