「あ、やばい。今何時?」

「八時になろうとしてる」

「……うっそ。どうしよ」





ポケットから取り出した携帯を
眺め、晴太が唸る。






「完全に遅刻だ。着信すごいし。怒ってるだろうな」

「誰だ?彼女か?」

「彼女はいないよ。父さんだよ」

「……親父かよ。シカトしとけ」

「そんな訳にはいかないよ」






みんなに断ってから、
晴太が電話をかけ直す。






「はい。すみません。……はい。はい。いえ。部活が長引いてしまって………
そうですか。また連絡します」



お父さんと話してるのに、
他人行儀な会話が聞こえる。




「…ごめん。俺、行かなきゃ」

「おい。行くなら心実に全部話してやれ」

「もしかして、彰くんは俺のこと全部わかってる?」

「なんとなくだがな」

「……晴太。私は後でいいから。約束あるならそっち優先して?」

「うん。ありがとう。今度ちゃんと話すから。また、会いに行くから。ダメ?」

「うん。分かった」






それだけ言うと晴太は背を向け。

歩き出した。










「じゃあ。またね」