「俺、美容師になりたいんだ」 「うん……」 先輩がずっと目指していた職業だって知ってたよ。 「ちゃんと勉強したい。だから、東京いこうと思う」 「うん……」 先輩はなんでも決めたことには熱心で真っすぐだもんね。 でも…… 「……泣くなよ、梓」 行ってほしくない、行ってがんばって勉強してほしい……両方の気持ちが同じくらい大きくて。 私の頭を優しくなでるこの手に、この温もりから離れたくなかった。