冬の駅のホームには、お昼でも人が少なくて。
「……月が、綺麗ですね」
「先輩、お昼ですよ。月なんて見えません」
「……梓、泣いていいよ」
「……笑顔で見送ろうって、決めてるんです」
そう言うと、先輩はぎゅっと私を抱きしめる。
ずるい、ずるいよ先輩。
「ずるい……」
先輩の腕の中は温かくて、大きくて、私なんか簡単に入ってしまう。
離れたくないよ。
この温もりから、この腕の中から。
先輩って、ずるい。
私より二つしか変わらないのに、ずっと大人に見えて、私を置いてまた大人になる道に進んでいっちゃうから。

