lucky cat

「いっそげー!!」

いつも通りの帰り道。私は学校から自転車である場所を目指してペダルを必死に漕ぐ。途中近くのコンビニに立ち寄って煮干しを買った。

「ねこ、居るかな?」

一週間くらい前から箱に入れられ捨てられていた猫。あの猫を見付けてから、もう一週間も通っている。

「あ!いたいた!」

川原に着くと自転車を止めて猫に駆け寄った。猫は相変わらずビクビクしていて、私を見て尻尾を膨らませた。

「シャー!」
「よしよし!怒るな、怒るな。今飯あげるて」

私は煮干しの袋を猫にちらつかせてニカッと笑った。猫はまだ子どもだから、小さくちぎりながらあげる。

「どう?うまい?」

猫ははぐはぐ言いながら餌をバクバク食べてる。私は猫を見ながらニヤケが止まらず笑っていた。

「うまかった?もうお腹いっぱい?」

猫は満足したのか箱の中に入っている汚れたタオルに身を委ね丸まって寝始めた。

「威嚇する割には、寝てるし……」

やっぱり猫は気まぐれだ。
そんな私も気まぐれである。周りの人間に関心があまりない。友達も少ないし、彼氏も今まで出来た事がない。それが寂しいと言えばそうでもない。周りは陰で可哀想とか言ってくれちゃってるけど、自分が可哀想だとかは思わないし思ったこともない。なんて言ったって、私は私でちゃっかり人生を楽しんでいる。周りの勝手なエゴの想像を押し付けないで欲しいな、全く。
それに比べて、

「お前はいいな。言葉を持たない。言葉はめんどくさいからなー。私も猫に産まれたかったし」

私は猫を撫でながら空を見上げた。
私は幸せでもあり、幸せでもない。周りが当たり前に持っているものを私は持っていないから。例えば、父親とか母親。きょうだいとか。私には家族がいない。親戚は居ても、家族がいない。成人式を親に見せたり、結婚式や孫を見せる事は愚か、約束していた親孝行や、海外旅行、新しくできたスーパーへの買い物すら、私は果たせず母親を亡くした。父親は私が小学校に上がる前に離婚していて、今は別の女性と共に二人の子どもと家族になっている。だから私はその点他の人と比べて幸せでないのかも。だけど私より早くに親を亡くしている子どももいるだろうし、親がいても虐待とかで幸せな日々を送れていない人も世の中にはいる。それに比べたら、私は数少ない友達から羨ましがられる程、母親とは本当に仲良しだった。この年になってもずっと一緒に外出したりしていた。……ま、だからこそ、大好きな大切な母親を失って私は変わってしまったのだけれど。

「んにゃー」
「お?やっと慣れたね」

猫は箱から出てくると今度は私の膝の上で寝始めた。

「お前も幸せであり、幸せでないね」

そして私の幸せ。それは母親を亡くしても短大だけど、進学ができること。そして一人暮らしを許されていること。親がいなくても、高校はまだ通え続けられるし、ご飯も普通に食べれる事。それが私の幸せである。

「私は幸せなんだよ。ただ、お母さんが居なくて寂しいだけ。お前も、親がいなくても寂しい?」

猫を撫でながら、そう呟いた。
何やってんだろ、私。
帰ってこない返事に苦笑して、寝てる所申し訳ないが、箱に戻した。

「ごめんね。うち、ペット禁制やから。飼ってあげれんけど、飼い主見つかるまで私が面倒見たるから。許して」

煮干しを残して自転車へ戻る。自転車に跨ぎ猫を見ると、猫も私を見ていた。

「また明日来んねー!」

そう叫んで、私は帰路へ着いた。