「私、....


好きだった航のこと」



ザァァァッ


波の音のせいか

2人の息さえ聞こえない


「初めてあったとき

これが恋なんだって、

思った」


ザァァァッ


「付き合えた時も本当に嬉しくて....




でも、豪に会っちゃった」


ザァァァッザァァァッ



「豪は、....


無口だし、チビだし

航とは正反対。でも


辛い時いつもそばにいてくれたのはー」



「もういいよ」


航の声が響いた

波は静かになった


「航....」

「わかってたつもりだった


手放したくない、って思ってても

守りたいって思ってても


豪みたいに素直になれないし

あの時、負け惜しみかもしれないけど

賢や虹のことで頭がいっぱいだったのも俺のせい



豪に取られても仕方なかった」



「わっちゃん、....

言いたい事は、もうない?」



「おう 悔しいけどな」

笑顔が切なかった

でも、選んだのは私だ




「男の癖に


泣いたらダサいから行くな」


手をニカッとしてふった航



返せる言葉はなかった

でも私の目に涙が滲んだ



ザァァァッ









「雪....」

豪の声は、優しい




ツゥーッ


航....バイバイ

ありがとう



ギュッ


「泣いていいから」

「ごめっ....。」


「分かってるから、全部」



優し、すぎるの



私の泣き声と航の背中は

海辺の波に消えていった




ザァァァッ