帰りの電車の中で、君が言った。




『前ね、ニュースを見てて思ったの。』



俺は、つけていたラジオを消した。




『人を傷つけた相手を許せよ。

というのは、間違っているかな?

傷つけられた人の家族とかが怒るのは、もっともな事かもしれないと思うの。』




君は考え込むような表情をした。




『でも、許さないと、復習の輪が止まらないの。』



『そうかもしれないね。』




俺は、また君の病気が再発しないか、心配になった。




『悪い事をする人には、愛が必要なの。

愛を与えてあげないと、また悪い事をしてしまうかもしれない。』



『そうかもしれないね。』



『でも、叱る事も必要なんだと思う。』



『そうかもしれないね。』



『悪い事は悪いって教えてあげなきゃいけないの。』



『そうだね。』



『人は、動物や植物や物を大事にしなきゃいけないと思うの。』



『しずく、大丈夫か?』



俺は、車を道路脇に止め、そう訊ねた。



『うん。』



君が答えたので、俺は一安心して、運転を再開した。