波がザザーンと、寄せては返す。


空が少しずつ闇の色に近くなってくる。




『撮りたいなら、撮って。

私を好きじゃなくてもいい。会いたいの。

写真を撮ってもらうという口実を利用していたのは、私の方。

悪いなんて思わないで。』




負けそうになった。


誘惑に負けそうになった。


君という最高の被写体を失う事への悲しみに負けそうになった。


・・・・・・でも、俺は、君を傷つけたくなかった。


好きでもないのに、俺に好意を寄せている君に会い続ける事は、君を傷つける事のように思えた。




『ごめん。』

と何度も繰り返し、俺達は別れた。



その時は、まだ俺は、君を失うことの苦しさを知ってはいなかった。


どれだけ自分が君を欲していたのかも、知ってはいなかった。