ハンナの足跡

 西島に連絡すると、行くと一つ返事で了解した。
 次の日の夜、西島と合流して、三人の住む部屋へ行った。途中、客引きを逃れるのが大変だった。ハンナ達の働いている店の前には人が大勢集まっていた。僕はとても嫌な予感がして、走った。赤いランプが回っているのを見つけたから。救急車が、僕が辿り着くのを待ってくれず、誰かを乗せて走り去っていった。僕は愕然として、辺りを見回すと、西島が居ないことに気付いた。あいつなら、足が速い。僕は群集に向かって行った。その中から、西島が先に僕を見つけた。
「先輩、朱美ちゃん、救急車で運ばれました!ハンナと、朋子ちゃんも一緒に乗って行きましたよ。病院の名前、教えてもらいましたから!」
 僕は息が切れていて、頭を激しく立てに振るくらいしか出来なかった。
 タクシーで、病院まで行った。西島に、どんな様子だったのか聞いてみると、朱美は担架に横になっていて、それをハンナと朋子が朱美の名前を呼びながら囲んでいたという。朱美の手首は血にまみれていたそうだ。病院に着くまでの道のりを、ひどく長く感じた。